=真澄記= このあたりの澤に油土と言うものがあるそうだ。 桧山の大越なにかしの門脇の翁がこれをとってきて、大きい蝋燭(ろうそく)のように串にさして、赤々と燈してなわないの夜なべをしていた。 その土の出るところを問えば、「深澤のあたり」としか言わず、詳しい場所は隠して誰にも明かさない。 その翁がみまかった後は、油土をとる人はなくなったと言う。