陸奥の甲斐守某がの地行所である壷の碑というところに千引き石という巨石があった。
この石には魂があり、人を捕って困るのでこれを捨てようとしてその地を治める甲斐守に言って各戸から人夫を召集した。
その村につぼ子という若くて貧しい女がいたが男手のいない家があった。彼女は男の中に女一人混じって人夫に出る事を悲しみ村を出る決心をした。
つぼ子には以前から契りを結んだ男がおり、この夜も忍び通ってきたが女の憂いを聞き、自分が千引の石の精である事をあかしたのです。
彼は「たとえ千人に引かれても動かぬが、そなたが引いたなら簡単に引かれよう。」と約束をしたのです。
その日がきて石の精が云ったように、千人の男が引いても石は微動だにしなかったが、つぼ子が一人で引くとさしもの大石もやすやすと引かれた。
村人はこれを埋め、千曳明神として祀ったという。