=真澄記=
丘一つ越えて坂を下ればまた湖水あり。田螺沼という。
桁倉の湖よりは水の広さいささか劣るが、水の色が緑で、深さは計り知れないものがある。
雨雪雫が峙つ(そばだつ)山々よりしたたり落ちれば、この水がどこに流れて行くのかはわからない。
あるとき、山の民が山に分け入って木を切り、糠(木屑)を試しに澤川に流した。糠は沢山湖水に浮いていたが、一夜を経て水に潜り、泥湯川に流れ出た。
泥湯川は高松の荘に流れていくので、高松の湖と言えるだろう。
湖の南岸に潜り水というところがある。このような所を突通し(ついとおし)また弘法大師の杖通し水とも言う。
この潜り水に近いところに比企田長峯というところがあり、松の中に濃淡の紅葉が見えて、絵に描きたいほどの景色である。
田螺沼の風景 |
田螺沼の風景 |
田螺沼の風景 |
田螺沼