=真澄記= <山神の花立> 山坂を登って休むと、朽木あるいは木の根などに「山の神の手酬」また「山の神の花立」と言って、そこらの朽木に小枝を折って通りがかりの人毎にさしてある。 このようなものを花立と言うものか。小坂の上、山の峠ごとにある。 これは手向けの神の古い風習としてこのあたりに残っているのだろう。 「ぬるで」の紅葉をさしてあるところがあった。通りがかりに来た男もまた紅葉を折ってさして行った。 それを見て、自分もまた同じようにした。 <山はげみ> 「今枝をさしたはげみは、何処の渓に行くのか、、」と案内人がつぶやいた。 「はげみとはどんな人なのか」と問うと、「今ごろは、ししたけ、まゆたけ等きのこを採る者を言い、おしなべて山仕事をする人を山業(やまはげみ)と言う」そうだ。 <一杯清水> 暗くなってきた。木々を分け入って笹の道を行くと、一杯寒泉と言って凍るような清水があった。一杯飲んで寒さを身に覚えるからその名がついたものか。 |
今も祀られる山神の祠 |
山門にも枝がさしてある |
小枝が二本さしてある |