駅沢の古鈴(松峰神社)

=真澄記=
伝寿院の神主は佐々木某と言って、代々仕え、長寿であったようだ。 
金蔵院の翁は九十三歳で亡くなったが、この翁が生きていて、明応の頃に、南谷の崩れより「駅沢の鈴」を掘り得た。 
「これは古いものだ。」と翁はたいそう大事にし、家の宝として納め、八代まで持った。 

最近、藩主の義和の求めに応じて献上したが、その写し絵を見ると、常陸の正等院にあると言う鈴と良く似ていた。 

これは、天安の大地震で堂と共に名残もなく埋もれていたものだろう。 
いにしえは、弓にも、鏡にも鈴をつけ、何の男子も鈴を振ったことから、あながち名馬の鈴かもしれなかっただろう。