=真澄記=
「大館の城」は昔、秋田城介實季の親戚である安東忠治郎實泰が主であった。
その頃、南部から嫁をもらい、「比内御前」と言われていた。
あるとき、城下にむじなが化けて夜ごとに出るとのことであった。
比内の方が入浴しようと思うと、怪しい男が入ってきた。このようなことは初めてであったので、殿に告げると同時に、「曲者であろう」と短刀を髪に隠して女湯に入って様子をうかがっていた。
まさに、男は湯の中に入ってきたので、一刀のもとに刺し貫いて殺したそうだ。
しかるに、それはおおきなむじなであったと言う。
「むじな」は「うじな」とも言い、山猫が年をとったものだとも言い伝わっている。