=真澄記=
谷川にかけ渡した丸木橋を危うく踏んで、川原毛の温泉に至る九曲の山道を下れば、高さ十七、八丈ばかりと思われる湯の滝が落ちていた。
病人はみな「螻蓑(けらみの)」というものを着て、編笠のようなもので頭を覆って、この滝に身を打たせている。
このようなものを着なければ、小石が落ちてきて体を打ち、くだくような心地がすると言う。
滝の上にまた小滝がある。小滝の下には滝淵があり、その深さは計り知れない。そこを「目蓮尊者ノ母の地獄」と言う。
湯の大滝の中に、不動明王を据えている。この明王の頭上を越えて、滝の落ちかかるさまはめずらしい。